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2013年12月25日水曜日

金沢の郷土料理「鯛の唐蒸し」

皆さん鯛の唐蒸しってご存知ですかね?

石川県以外の方にはあまり馴染みがない料理だと思います、まぁ石川県の人でも知ってる人は少ないかもしれませんね。

説明いたしますと、金沢の郷土料理の一つで、鯛の腹におからを詰めて大皿に並べたもので、婚礼に際して供されるおめでたい料理なんです。めでたい鯛の中に子宝に恵まれるようにと、銀杏や麻の実、百合根、人参、蓮根などの縁起の良い食材を入れて作った卯の花(おから)を詰めた料理のことです。

金沢でも一部の料亭さんでしか作ってないんじゃないかなと思います。

その鯛の唐蒸しを作る機会があったので、せっかくなので作業風景をご紹介したいと思います。

唐蒸し等のお祝いの料理はまず見た目でお客さんを楽しませる必要がありますので、素材にはとびきりな物をご用意しました。


50cmアップの立派な鯛、能登の知り合いが朝上がったばかりも物を届けてくれました。目がまだ輝いていますよ。

唐蒸し用の鯛は水洗いの仕方が異なるので説明いたします、普通水洗いは腹を開いて内蔵等を取り除くのですが、武家社会の発達してきた金沢では、腹を切る=切腹に結びつくので、姿で使う鯛は背開きで包丁を入れていきます。

ウロコ、エラをきれいに取り除いて、頭を左、背を手前にして、三枚おろしの要領で頭のヒレからヒレの付け根までの間をおろしていきます、腹のところまできたら切るのをやめ、背中から手を突っ込み内蔵を取り除きます。

きれいに水洗いをし、水気をきれいに拭き取ります。

皮目に細かく串で無数の穴を開けます、これは蒸した時に鯛が膨張して皮が破れる恐れがあるので、革に傷をつけておくことで皮に伸縮性が生まれ破れにくくするためです。そして塩をあてます。ここでの塩は主に臭み取りと下味をつけるためです。

次におからを作っていきます。おからはまず小鯛と昆布で出汁をとります、そのとった出汁でおからを煮含めていくことで鯛の旨みが効いたおからに仕上げていきます。


出汁の取り方は昆布の旨みがもっとも出る60℃で一時間、煮出したあとは昆布を取り出し沸騰状態にして、そこから鯛のエキスを20分間煮出しました。

とった出汁に薄口醤油、砂糖、味醂で味を整えたものにおからを投入し煮含めていきます。ある程度水気がなくなってきたらおからの具材を入れていきます。おからは仕上げに太白胡麻油を加えるとしっとりと仕上がり、艶よく口当たりも良くなります。

鯛とおからの準備が整ったら、鯛におからを詰めていきます。詰めすぎると皮が破れてしまうので注意が必要です。おからを詰めたらヒレの部分を立たせて爪楊枝で固定してあげると、仕上がりが良くなります。

蒸し器に入れ、約1時間程蒸すと完成です。仕上げに下に松の枝を敷いてあげると見栄えよくなりますし縁起もいいです。


おから詰めすぎて結局皮が破れてしまいました・・・

もし作られる方がいたら皮には気をつけた方がいいです、この料理は見た目のインパクトが重要です。私の失敗をどうか役立ててください!笑

それでは今日はこの辺で・・・

2013年12月17日火曜日

石川県産の地鶏「能登地鶏」を発見!

石川県には地鶏はいないと思っていました。肉を専門に扱っている業者に問い合わせてみても「石
川県には地鶏はいない」と言う返答ですので、正直諦めていました。

石川県で唯一鶏の生産・販売を行っている河内物産さんのブランド「健康鶏」は結局はブロイラー
なので、地鶏にあるような、肉の旨みとか脂の感じ、脂の間にあるゼラチン質の層、そして香りが物足りないなと思っていました。

そんな時、日本の銘柄鶏の一覧が見れるサイトを何気なく眺めていました。

「おっ!あれ!?」

って最初は思いました。

「能登地鶏・・・?石川には地鶏いないはずじゃ・・・」

よくよく読んでみると、石川県の能登町にある小さな養鶏所さんで作っていることが判明!しかもサイトもある「能登鳥の里」すぐにクリック!

なるほど、月に少量ではありますが出荷もしている正真正銘の地鶏であることが判明!

速攻電話です。

電話対応も良くもも肉1キロ分即購入しました。

しかし、なぜ業者の人は知らないのだろうかと言う疑問はさておいて、届いたもも肉を早速調理してみました。

調理方法は和歌山から取り寄せた紀州備長炭の細丸での炭火焼きです、細い方が突発的な熱源のパワーがあるのです。なぜ違うかはまたの機会に発表します。調味料は塩のみ、今回はアルプスの岩塩を使用しました。


素材が良ければ良いほど、料理は攻めです!塩も攻めます!良い素材の場合、塩辛いかなと思う手前でもしっかり素材の風味が残る、素材が負けないんです。

焼き方にもこだわります、今回は身の部分と皮の部分を別々のアプローチで火を入れていきたいと
思います。


まずはもも肉を常温に戻します。これは肉の芯温度をあげることで均等に火を入れるためです。そして皮目に細かく傷をつけます。細かく傷をつける事によって、焼いたときに皮と身の間のゼラチンの層が表面に溶け出し、その溶け出したゼラチン質で皮を揚げ焼きすることによって皮目の仕上がりが煎餅みたいにサクサクになるのです。

色々な食材で試した結果、鰻は一度蒸してから焼くと良いのに対し、地鶏は地焼きが一番良いです。

火の入れ方はまず身側から、身側は余熱を利用し中までじっくりと火を通していきます。肉汁が外に逃げ出さないようなギリギリの火の入れ方でアプローチをかけます。フレンチでよく使われる、火を短時間入れては肉を休ませる、また入れては休ませるを繰り返し、肉にストレスを与えることなく中まで火を通していきます。



一般的にある最初強火で表面を焼き固めて肉汁を閉じ込めるやり方はドリップが防げないと言う研究結果が既に実証されています。あれでは急激にタンパク質が固まるので肉の中にあるジュース(肉汁)が外に押し出されてしまうのです。




皮目バリッバリッに焼けました、やはり炭火は香りがいいですね。

あっ!ちなみに焼き魚や肉に火が通りやすいと言う理由で切れ込みを入れる料理人がいますが、あれはドリップの作用を促すだけなので関心しません。時間をかけてゆっくり火を入れたほうが美味しいのにもったいない。

では実食・・・

美味いです!地鶏らしい肉の旨みがあり皮も旨い、皮はホントに煎餅みたいにサクサクして新食感!多少肉の繊維が強いかなと言う印象、でも石川県にも地鶏があると証明してくれる味でした。

少し気になったのは肉質がしっかりしていて筋っぽいので皮と身のバランスが悪いこと、なので身の部分を1.5センチぐらい削いで美味しいバランスにして食べてみると・・・


ベストマッチ!!大正解でした!!

石川発の地鶏「能登地鶏」!いやー良かったです!


2013年12月10日火曜日

作業ではなく本質を捉えること

今回は今やっていることが作業なのか本質を捉えている=料理をしているのか?という話です。

それを日本人に馴染みのある寿司を例題に考えていきたいと思います。

ミシュランで3ツ星をとっている数寄屋橋次郎の主人小野次郎曰く

「酢飯(シャリ)が美味しければ、ネタが普通でも美味しくいただける」

だそうです。寿司を握り続けて50年の職人がそう言っております、私自身もシャリの重要性を実感している一人です。

なるほど、シャリが美味しいと寿司が美味しい、ではうまいシャリとは?

ここからが本題です。

シャリは人肌程度の温度が美味しいとされています。

しかし、それは単に温度だけの問題なのでしょうか?シャリを人肌程度の温度までもっていけばいいだけなのでしょうか?

数寄屋橋次郎さんのホームページでその答えなる面白い文が載っていたので私なりに説明いたしますと

数寄屋橋次郎ではお客様に最高の状態の寿司を食べてもらうために酢飯にこだわり、お客様の来店30分前にご飯を炊き上げるようにしているそうです。

米を研いで鉄の羽釜で炊き上がるまで約60分。炊き上がったご飯に酢を回して冷まし、シャリ鉢に移し、わらびつに入れ保温します。30分くらいすると、ご飯が酢を吸い込み、ひと粒ひと粒の硬さがちょうど良くなり、食べて一番旨い時になるます。この温度が人肌と言うことです。

なるほどですよね!

つまり人肌にしているのではなく、結果として人肌が美味しいと言うことです。

いつもやっている些細なことでもその仕事の奥にある本質を理解するかしないかが、出来る人かそうでないかを分ける事になりそうですね。

まとめると人肌の温度にシャリをもっていく、それ自体はただの作業です、ただ型にはまっただけのつまらないものです。それが相手に美味しいものを食べせてあげたいという思いで、炊きたてのご飯を炊き、酢を回し、少しなじませて最高の酢飯を作った、そのタイミングがちょうど人肌の温度と一緒だった、という事になりますと、同じ人肌の温度のシャリでも天と地ほどの差が表れてくると思います。

さて、皆さんはどう思われますでしょうか?それでは。。。