協力

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2014年1月23日木曜日

赤身魚の旨みを引き出す、あらたな可能性

今回は牛肉の赤身肉で行った血の酸味や鉄分を旨みに変える「藁でいぶる」と言う技法をしめ鯖で応用してみました。

しめ鯖は時間がたつとこなれてきて旨味はますのですが、酸味や血生臭さがたってきます。寿司屋などは酢飯と合わせることで特有の酸味や香りを酢飯と中和させるのですが、お造りで食べるとなると・・・

魚は寝かせることで旨味がますと前にご紹介しました、次にそれと並行して出てくる生臭さ、これをどうにかしたい。

余談ですが魚は〆る(殺す)時に血抜きをしてあげないと身に血が残ります。きれいに血抜きをして保存した魚は時間がたってもおいしくたべられるのですが、身に血がのこった魚は2日もたつとくさくなってしまします。

臭くなる原因は血にあるのでは?鯖の血合い(血)の部分に対してアプローチをかけると美味しくなるのではないか?

そこで前に紹介した藁でいぶるという技法が使えるのではないか?そう考えました。

炙りしめ鯖ならぬいぶりしめ鯖と言う感じです。

(作り方)

鯖はおろして、両面に塩をたっぷりすりつけ、1時間おきます。

塩を洗い流し、甘酢につけます(今回は米酢4、リンゴ酢1、水2、砂糖適量)

30分つけて、裏側にしてもう30分つけて酢からあげます。


これを2日間寝かせます。

皮をひいて骨を取り除きます。

藁を用意して藁缶にいれ、火をおこした炭を1ついれます。

白い煙があがってきたら、藁缶の上に網をおいてしめ鯖の身が下側になるようにおきます。(血に対してアプローチをしたいので)

ふたをして約20秒ほどいぶします。

取り出して切り出します、切り方は1、2、と半分ぐらい切込みをいれて3、で切り離します。八重造りと言うやつです。

身は厚めに切って噛みながら旨味を味わう的なイメージで。

醤油をつけていざ実食!

最初、燻香が口に広がりかみしめていくとしめ鯖、従来のしめ鯖は最後に血なまぐささが口に残るのですが、燻ったしめ鯖はそれがない!むしろ最後の後味がコクのある旨味で口に広がる感じ、嫌な感じもまったくない。

これは新しい可能性です。今回は鯖でしたが応用もできるはず、次はブリやマグロなどの赤身の魚でも試してみたいと思います。

それでは今回はこのへんで・・・


2014年1月17日金曜日

大うなぎの件

前回はカニの件まで説明しましたので、今回は大うなぎの件から説明していきたいと思います。

大うなぎは鳥取の中海でとれた、1.5キロのものを使用


うなぎは5日間寝かせてあります。寝かせるといってもピンとこない方もいると思われます、寝かすとは要は身(肉)を熟成させていると言う事。

一般的に食肉にされる、動物(牛や豚)や魚等、姿、形は違えど筋肉や骨といった構成物質は似たようなものです。そこで死んでからの変化(死後硬直や劣化)と言うのは個体によって差はあるものの大体が同じような変化の経路をたどります。

一般的に生物が死ぬと筋肉が弛緩します、そこから死後硬直がはじまり、死後硬直が終わると自己消化をおこしていき劣化につながっていきます。このサイクルはほぼすべてにあてはまります。

釣りたての魚やいけすから出してきたばかりの魚を〆て刺身にして食べたことがある方ならわかると思いますがあのブリッブリッな感じ、あれが死後硬直前の状態、食感は特別なものはありますが旨味はあまりない状態。

そこから体がピーンとはる死後硬直がはじまって、一定期間をへて、タンパク質が分解していく、
この時にうまみ成分が生成されたり、身がしだいに軟化していきます。しかしそれと比例して人間に害のある微生物が繁殖したり、食肉自体がもっている消化酵素などが作用して劣化にも進んでいきます。

要は腐る一歩手前、その紙一重のところが旨味を最大限に引き出すコツ。そのためには温度管理や湿度を徹底に管理する必要がありますので家庭では難しいですね。牛肉なんかは皆さんの口に入るまでに一カ月は寝かされて(熟成)いるんですよ。

話がだいぶそれてしまいました。今回はうなぎの件でしたね

うなぎは旨味を出すために寝かせています。その寝かしたうなぎを背開きで開きました。腹から開くとなぜか焼いたときに皮がはがれやすいと友人が嘆いておりました。

今回のうなぎは親方サイズ、これだけ大きいと食べた時に骨が口にあたってしまいますので、骨に対してなにか仕事をしなければなりません、骨に対する仕事といえば日本料理には骨切りという技法がある、しかし骨切りをすると骨はあたらなくなっても、焼いたときに切った断面からせっかくの脂が落ちてしまう。

ではどうするか?うなぎの骨は鱧などに比べるとCT値が低いことが判明、CT値とは骨の硬度の事、骨はあるけど硬くない、硬くはないけど口にはあたる。

そこでホームセンターに売っていたデザイン用の先のとがったはさみでうなぎの骨を細かく切って処理を施しました。そうすると口に骨がまったく感じずに食べられます。

処理を施したうなぎに串をうって、4分30秒間蒸していきます、蒸すのは皮にあるコラーゲンの層をゼラチン化させるのが目的です、魚の場合コラーゲンは65℃でゼラチン化してきます。ゼラチン化させる事で皮がバリッバリッのせんべいみたいに焼けます。

焼きはうまめがしの備長炭を使用、皮目からじっくり焼いていきます。イメージとしては人間の肌はコラーゲンがあると肌の張りが良い、保水されているそんな状態、コラーゲンがないと乾燥しやすい状態、うなぎも同じ、コラーゲンがあるとしっとり、ないとバリバリ。コラーゲンをゼラチン化させてそのゼラチンを焼き切るイメージ。そうするとせんべいみたいなバリバリ食感になります。

皮目を焼いたら身の方を焼いていきます。身は近火で、うなぎのもっている脂を落としきらないイメージ、香ばしさはタレを吹き付けながら出していきます。タレは4~5回吹き付けてテリをだし、仕上げに叩いた木の芽を表面につけ、完成!

いやー最高ですよ、はい。それではまた!

2014年1月6日月曜日

新年明けましておめでとうございます。

新年明けましておめでとうございます。

一、富士、二、鷹、三、なすび

初夢で縁起の良いものですね。

私どもの縁起の良いものは普通とちょっと趣向が違いまして・・・

一、蟹、二、ぶり、三、ウナギ

ってなもんで・・・笑

新年からめでてえものです。

年末に知人の一人(ミシュラン2ツ星で勤務中)が神戸から帰省いたしまして、皆で料理を楽しんでおりました。

その知人が持ってきてくれた食材が


蟹の質、漁獲量共に日本一と呼ばれる兵庫県の日本海側に面している浜坂漁港の順風丸でとれた松葉がに(1200gの怪物クラス)と


鳥取の中海、その河口でとれた1.5キロの天然の大ウナギです。


5日程寝かして旨みを引き出してある状態のものです。

私どもが用意したものはこいつです


七尾港でとれた15キロの能登ブリです!ブリは日本海側でも内海が良く、七尾から氷見辺りのブリがまさしく日本一の味です。

これらを私どもで調理いたしました。

まず松葉がには刺身、焼き、蒸し。

刺身は昆布出汁でさっと湯どうしし氷水に落とします、生の状態よりカニの旨みが強く感じられ食感もプリっとカニの繊維一本一本の存在感が立っています。甲殻類などは火をさっと通してあげると中の旨みが引き出されます。

醤油を先にちょんとつけて召し上がりました。


焼きは殻側にしっかり火を入れて、表面は炙るだけ、火はギリギリで入っているけど中はしっとりしている感じ、それを追求しました。


馬目樫の備長炭です、備長炭は無臭なのが特徴なのです。

そして蒸しガニ、これが美味かった!写真はないのですが・・・すいやせん

蒸したカニの身をすべてせせり、これまた蒸したカニ味噌と合わせて、カニ酢を混ぜていただきました。かに酢は普通に飲むと甘っ!と言うぐらい甘いもので、どうなのと言う感じ、

食べてみると・・・どーなの!!

うんまっ!

甘いのが良い、カニ味噌と合わさってすごくクリーミー、口の中が幸せで包まれました。

最後はカニの甲羅、殻を炙ったものを使っての甲羅酒、甲羅酒にする酒は大吟醸、大吟醸と言いましても燗をするために作られた、温めることで完成する大吟醸、「九頭竜」(福井県の黒龍酒造)を使用しました。


さてさて、これも旨い、旨すぎる・・・濃厚なカニのポタージュを飲んでるかのよう、しかも最初に酒がすっと鼻を通って後味カニ!とにかくすごい!

長々と文が続いたので今回はここまで、これの続きはまた今度ということでどうか一つお願いします。それでは!